02




どこか浮ついた雰囲気だった14日と打って変わって、元の立海らしさに包まれた翌日の放課後。
帰り支度を終え廊下に出たあたりで、何気なく窓の外を見遣ると、花壇前に設置されたベンチに誰かが座っている。
顔などわかるはずもない距離だったが、どうしてか認識出来てしまった。
今日一日の記憶を辿り、日頃なれば交わしている他愛ない話を、そういえばあまりしていない事に思い当たる。
挨拶は普通にしたし、特に変わった様子もなく、怒りを買う真似をした覚えもない。
何より放課後に花壇を見ている印象がなかったので意外だ。
なにかあったのかな。
そんな軽い切っ掛けが、下校の道を狂わせた。


階段を下って昇降口に着く。
踵の部分を引っ張って靴を履き、重い扉を開けば2月の風に吹き付けられて、冷たさに頬が引き締まる。
いつも使うはずの通路を逸れ、旧校舎側へ足を向けた。
唇から零れた白い霧がどんどん後方に流れ薄れてゆく。息は静かに弾み、巻きつけたマフラーに当たって、首元へと温もりを与えた。
途中枯葉を踏んで、乾いた音が高く耳まで届く。
目的地に近づけば近づくだけ、確信は増していった。顔や姿よりも、ベンチ横に立て掛けられたラケットバッグがその人の正体を如実に物語っている。
何十歩か手前、残り数メートルの地点で一度足を止め、ゆっくり深呼吸した。
見過ごす事も出来たけれど、選ばなかったのは私だ。
また歩き始める。

「幸村くん、何してるの?」

座った彼の少し横、斜め前に立って問いかけた。
恐ろしい事にコートもマフラーも身につけていない人が、私の姿を目にとめて笑う。
吐く息は同じように白く、寒くないのかな、とぼんやり考えた。

「猫がいないかなと思ってね」

こそ何してるの、とは聞かれなかった。
はぐらかされず、まともに寄越された答えについて逡巡したのち、猫、と独り言に似た小ささで言い落とすと、うん、猫、オウム返しされる。

「生徒会のお知らせのプリント、見た事ない? 校内にノラ猫がいるってやつ」
「あー……記憶にあるような、ないような…」
「フフ、覚えてないなら覚えてないってはっきり言いなよ」
「………あんまり覚えてません。すみません」
「うん。だから、この辺にいないかなってね」
「私、校内で見た事ないなぁ」
「俺もないんだ」
「あっ、もしかして花壇荒されたりしてるの? 私も一緒に探そうか?」

単純な善意からの申し出だったが、どうも彼の思惑からは相当に外れた思いつきだったらしい、半ば吹き出される形で笑われた。
いや、いいよ、大丈夫。
声色はどこか楽しそうだが、理由に見当がつかず首を傾げそうになる。

「もう見つかったしね」
「え、嘘、どこ? どこにいるの?」

慌てて周囲を見回しても、猫どころか人っ子一人いない。
幾度も注意深く視線を巡らせたが、結果は同じだった。
訝しげに発言者の方を向くと、

「さあ?」

にっこり。
そういった表現が最も当てはまる笑みで告げられた。
思う。あ、微笑み殺だ。

「……なんなの。本当に猫、探してたの?」
「ああ、ずっと探してた」

確かな意志を掲げた口調に気圧され、次の声が喉奥にはまって出てこない。
下方から投げられる眼差しは真摯なものだった。
一切の無駄のない挙動に、冬の温度も忘れてつい思いつくまま尋ねてしまう。

「えーと、なんで?」
「どうでもいいものだったら、そもそも探したりしないと思わないかい?」
「え、ええー…?」

意味がわからない。問いかけているのはこちらなのに、何故か問い直されている。
私が理由考える所なのそれ。
微々たる不満を抱きながら、もたつく頭を必死に働かせてみる。

「……ノラ猫じゃなくって、誰か知ってる人の飼い猫、とか?」
「半分は合ってるかな」
「は、半分? どっち? ノラ猫じゃないって方?」
「そうとも言えるね」
「え、えーと…じゃああれだ、実は猫じゃない!」
「はは、なるほど」

ほぼヤケクソの当てずっぽうだったが、意外に大きな収穫を得た。
違うと却下されないという事は、案外近いのかもしれない、続けて同じ路線を攻めてみる。

「猫じゃないにしても、大事なもの!」
「うん、それで?」

答えが幸村くん次第で変わる、超難問のなぞなぞを解いている気分になってきた。

「でも幸村くんのものじゃなくて、誰か別の人のものとか」
「へえ、そうなんだ」
「いや私が聞いてるんですけど…」

何その生返事。違ったのか。

「でも、そうだね。俺一人の判断でどうにか出来る事でもないから、俺のじゃないのは確かかな」

ヒントをくれるのは有り難いけれど、意図が掴めなくては折角の情状酌量も形無しである。
いよいよ混迷を極めてきた謎に、首を傾げるだけでなく顔を顰める段階まで追い詰められてきた。曇る私とは正反対、幸村くんは楽しそうに晴れ晴れとした表情だ。

「自分のものじゃないのに、ずっと探してたの?」
「だとしたら、呆れるかい」

それはない、とすぐさま脳裏に否定が浮かび上がる。

「呆れたりはしないけど。なんでって思う。誰かの大事なものだからっていう理由だったら、幸村くんは親切ないい人だなって思う」
「あははっ! 本当に、はいっつもだ」

肩を揺らして笑う人が、いつかと同じ言葉を口にした。
振動に準じた目に見える呼気は、白く空中を裂き、弾む声と似た揺れを起こす。
雨の病院は、もう何年も前の遠い過去のよう感じられた。

「……いつも同じ私じゃなかったら、それもう私じゃないじゃん」
「フフ、見かけの事を言ってるなら違うからね。考えを改めた方がいいよ」
「なんの忠告なのそれ…」
「忠告っていうかお願いなんだけど」
「全然お願いされてるように聞こえないんだけど」
「相変わらず、の中の俺はかなり信用されてるんだなと思ってさ」

とてつもなく上から目線の発言な上、こちらの訴えは無視だ。
話したい時に話し、話したい事だけを話す。
久しぶりに味わう、お見舞いへ行っていた頃の応酬は、なかなか噛み応えがあった。
からかわれているのか違うのか、いい加減はっきりさせようと渇いた唇を開きかけたと同時に、厳しさを纏った低い音が思いっきり剛速球で投げ寄越された。

「幸村! 集合場所を決めたのはお前だろう、何故こんな所にいる!!」

辺りに響き渡る声の主を確かめるより先に、条件反射で肩から背中にかけて強張らせ、ヒッ! と悲鳴をあげかねない私の前で、平然と落ち着き払った態度の幸村くんが応じる。

「まだ時間前だろ」
「ここからテニスコートまで何分かかると思っているのだ! そもそも今何時かわかっているのか!?」

学校中の誰もが見間違えたりはしないだろう、真田くんだった。
インパクト抜群の驚きが過ぎ視界の幅が戻ってくると、怖い顔をした彼の一歩後ろに柳くんがいるのがわかって、そのまたずっと後ろ、旧校舎の出入り口あたりにテニス部の面々の姿が見えた。
表情がわかるような距離ではないので雰囲気と髪の色で判断しただけだが、どうやら三年の元レギュラー陣が揃っているようだ。
なんだ、用事があったんだ。
すっきりしたのと安心したのと両方から息を吐き、即座、邪魔になったらいけないと背筋を正す。

「俺達が通りかかったからいいものを」

尚も叱責を飛ばす真田くんに、ごめんなさい私が話しかけて引きとめたから、謝ろうとして半歩右足を進めた。
しかしながら、あの、という第一声は、涼やかな声音に掻き消されてしまう。

「何の話をしていたんだ?」

柳くんがどちらに問うているかは、短い時間で判断出来なかった。
こういう場面で口を出す事が少ない人、として彼を見ていた私は、ちょっと呆気にとられる。
おい蓮二。
そう咎める人の顔は険しい。
はっとして、座ったまま立とうとしない幸村くんへ視線をやるも、彼のものとはかち合わない。それどころかチームメイトの問い掛けにも答えようとせず、ただ沈黙を保っているだけなのだ。
放っておけるはずはなく、なんとか弁明しようと話し出した。

「あ、あの、ごめんなさい。幸村くん引き止めちゃって。ほんと何でもない話で、世間話っていうかノラ猫がいるとかいないとか、人の大事なもの探してる幸村くんが親切でいい人かもとか、そういう……」

支離滅裂な釈明に、真田くんの眉がぴくりと上がる。
まずい。怒られる。
頭の天辺から血の気が引く幻聴がしたがしかし、幻よりもずっと力のある声がすべてを無に帰した。

「俺は好きでもない子に親切にしたり、いい人だって思われるような事はしないよ」

時が止まった。
場の時空を操った張本人と北風に前髪を煽られた柳くんの両名は、正常に現実を刻んでいるようだが、少なくとも私と真田くんの時間は止まっていた。

「そういうわけだから。、俺と付き合って」

ちょっとその辺まで、みたいな調子だったので、一体いつそれが後に続いてかぶさるのか構えて数秒待ってみたけれど、虚しく風が吹くばかりだ。
固まったあちこちの関節をなんとか曲げて彼を視界に入れるが、にっこり。
微笑み殺、再び。
はあ? と率直な感想が舌に乗るより早く、だらしなく垂れ下がっていた掌、指先を掴まれて軽く引っ張られた。
返事は。
求められ、急激に負荷がかかった所為で働きの鈍った脳が、ようやくのろのろ運転をし始める。
え、返事? 返事って、なんの返事?
それより時間大丈夫? 行かなくていいの?
どれもこれも言葉にならず、頭の上をループするイメージに捕らわれた。
拍を幾つか長めに置いて、間抜けにも開きっ放しだった口から擦れた声が絞り出される。

「いや……あの……。…………付き合うって?」
「なんだ、聞いてなかったのか。俺はが好きだから、と付き合いたい。幸いな事に高等部でも一緒だしね。卒業式まで待ったりしたらいい加減イライラするだろうし、間違いが起こらないとも限らないからさ」
「はあ!?」

今度ばかりは、しっかりはっきり言葉になった。
大分裏返った妙な声色のお陰なのか、私に遅れること数瞬、真田くんの時も動き始める。

「な…っ! 幸村お前! こ、公衆の面前で何を……!!」

たるんどる、でもう一度時間が止まらないものかと期待して首を傾けたが、怒りかそれ以外の何かでわなわなと震えていた彼の言葉は、さぞや無念だろうに志半ばで潰えた。
見るからに重そうな柳くんの拳骨が、真田くんの後頭部に叩き込まれたからである。
これ以上ないほど綺麗な一発だった。
大きな体は衝撃によろめき、イメージと違って相当力持ちらしい柳くんによって半分支えられる、というか引きずられるようにして他の面々が待つ位置にまで後退していく。
一連の動作を何から何まで涼しい顔でやり遂げられて、呆然とする他なかった。どんなチームワークだ。



くい、と腕を引かれたので横向きだった首を戻すや否や深く後悔した。
真正面から彼の瞳を見詰める勇気などあるはずがない。
わざと目線を外して己の手元を注視すると、握られているのは指だけなのに、引こうとしてもほんの1センチだって動かない事を知った。

「いやいやいや、待って待って、ちょっと待って!」
「待つってどれくらい?」
「どれくらい、どれくらいってそれは……」
「決められないなら待たない」
「き、決めます! あ、あと、あとさんじゅ」
「言っとくけど俺20分後にはテニスコートにいなきゃならないから待てても10分だ。気持ちとしては5分だって1分だって待ちたくない」

無茶苦茶だこの人。
絶対に最初から待つ気ない。
ならば相応の覚悟を決めねば立ち向かえないのだが、手袋に包まれているにも関わらず爪の先までが過敏になった状態では、一点に集中する事など出来やしない。
ぱくぱくと酸素を乞う金魚のように、絶え間なく喉から送られる感情を発散させる。

「待ってよ、待って…ほんとに待って! だ、だって私、私じゃ無理だよ、気遣えないし無神経だし、それから考えなしだし、あと忘れっぽいし頭も良くないし!」
「うん、そうだね。本当には人の話聞いてない。あんなに疑えって言ったのについさっきまで俺の言う事信じてたし、そのわりには変な所で警戒して距離置こうとするんだものね、まったくどうしようかと思ったよ。あとなんだっけ? 無神経? そんなの今更じゃないか正直イラッとした時だってあったよ。で、それがどうかした? 繰り返すけどほんと今更だよね」

仮にも告白した相手に向けてぶつける言葉だろうか。
酷すぎる。
というか普通に傷ついた。
いくら言いだしっぺが自分だからといって、ここまで倍返しされるなんて予想していない。
だが反論は出来ない。悲しくも情けない事に、紛れもなくその通りの事実だった。
単語一欠片さえ胸中に浮かんで来ず、打つ手なしの丸腰状態で黙り込むしかない。

「でも俺はがいいんだけど。ダメ?」

たった一言で、全身が熱くなったのがよくわかった。
血が沸き立つような音もする。
寒さの所為じゃなく頬が赤い、確認のしようがないけれど間違いないだろう。
たじろいで、半歩後ろに下がる。腕が限界まで伸びた。痛みなど感じる余裕は持ち合わせていない。

「落ち着いてよく考えてごらん。たとえば他の誰かに告白されたとしよう。自分で駄目だと思ってる部分を知られないまま付き合って、あとからそんな子だとは思わなかったとか言われたりして、幻滅されて終わるような結末、迎えたくないだろう。だから俺の方がいいと思うよ。の事よく知りもしない男よりさ。これから先の人生長いけどなかなかいないと思うなぁ、最初っからイラつく所とか気が利かないのわかってて、それでも君がいいって言うような奴」

俺以外。
直接言われはしなかったが、押しても引いても揺れもしない掌に無言で語りかけられた。
あまりの展開に避けていたはずの顔を見てしまい、しぶとく光る双眸とぶつかる。
相変わらず私の口は閉まらない、一方幸村くんは芯からにこやかな笑顔であった。
違う。
この人は、神の子なんかじゃない。
思った。
最早ただの神様だ。
人の心を見破り、まだ見ぬ未来までも定めようする、問答無用で導きを与え、己が指し示す方へと強引に引きずり込む。必死にもがいているのを見守ろうともしないで、一足飛びに答えの終着点を作ってしまう。
全くもって優しくない。
博愛精神の欠片もない。
こんなにも迷える子羊の為にならない神様がいていいのだろうか。
呆れなどとうに通り越した。
普段なら馬鹿正直に受け取るはずの評価にも、不思議と落ち込まない。
代わりにスロースターターな心臓が脈打つ速さを上げていく。
この場から走り出したい一心で足や腕を懸命に引くが、幸村くんはびくともしなかった。本当に指先でさえ微動だにせず、焦りだけが積み重なっていった。

「よくわかりましたとりあえず手離して」
「離したら逃げるよね」
「そりゃ逃げるよ! 逃げないわけないじゃん!」
「逃げてもいいけど、返事をした後にしてくれないか」

幸村くんの声が鼓膜を揺らす度に胸の霧が薄れる。
底の知れぬ不安も、人目を気にしてしまう小ささも、至らぬ自分に感じた羞恥も、すべてが砕かれて粉微塵と化していく。

「わかった、に、逃げない逃げないよ帰るだけ。あ、か、帰って検討するだけだから! 家でよく考えてくるから!」
「駄目だよ。そんな事言って、どうせ明日になったら俺を避けるに決まってる」
「避けません! 絶対避けないって約束する!」
「前科があるのに信じられるわけないだろ。二学期始まってからしばらく近寄って来なかったの俺は忘れてないよ、

まだ根に持ってた!
そもそも別に避けてない!
訴えは舌の上で勢い良く空回りし、唇は酸素を食むだけだ。
冬特有、空気の冷たさが消えている。有り得ない事だが、マフラーやホッカイロを邪魔だと感じてしまうくらいに熱かった。ともすれば窒息するんじゃないか、と危ぶむ程に呼吸が苦しい。

「だ、大体なんで今、ひ、人がいる前で言うの!? 幸村くん私が嫌がるの絶対わかっててやってない!?」

ちらと目を斜めにすれば、彼のチームメイト達が端に映り込んで、悲鳴をあげそうになる。
空気読んでこの場を去るとか、姿が目に付かないようにするとかしないのかテニス部。
どういうつもりで堂々見物してるんだ。

「ああ、うん。多分そう言うだろうなって思ったよ」

悪びれもせずあっけなく告げられて、後退りに振り絞られていた力が抜けかけた。
隙を見逃さない彼の手は、すかさず間合いを詰めようとぐいぐい引っ張ってくる。

「けどは周りに誰かいた方が、逃げられなくなるからさ」

私自身の事なのに、決定事項でも通達するかの如く呟き落とす。
今頃になって知った眼前の人の真意を察し、ぱっと首から上を旧校舎の出入り口あたりへやっても、遠くてはっきりした表情の確認は叶わない。
もしかしなくても柳くんだ。
立海男子テニス部の参謀の名は伊達じゃない。
気づいた所で、何もかもが遅すぎた。

「はい、外野は見ない」

空いていた方の手まで掴まれ、終いには両の腕の自由まで失った。
引かれて前のめりになり、足が微かによろめく。本気で声をあげそうになった。
誰か助けて、と神頼みしかけて、瞬時に祈りの無意味さを悟る。
聖書も神力も持たない、それどころか自ら放り投げるであろう、等身大の神様がすぐ傍にいるのに、一体どこの神々が助けに来てくれるというのか。
耳が熱い。
真っ赤になっているはずの自分の顔色を想像したら、更に赤みが増していく気がした。
眉が歪む。
唇は情けなく曲がる。
どういうわけだか視界がじわりとたわみ出す。
結論を後回しにし、気づきたくないから見ない振りをして、自分を卑下するのを言い訳にすり替えてきた罰が当たったのだ。私ですらわかっていなかった私の奥底を、いきなり掴んだあげく離してくれない。
どんどん目の前が薄い水の膜で覆われていく。
心臓が耳の横に移動してきたような錯覚のおかげか、頭のそこかしこで鼓動がうるさく反響した。
潤む景色の中で、幸村くんがすごく嬉しそうに笑っている。
くそう、と汚い言葉が止める間もなく飛んでいった。罵詈にも取られかねない一声だったが、彼の喜びを含ませた微笑みは崩れる素振りを見せない。

「好きだよ。ねえ、返事は?」

半泣きの私にも容赦なかった。
手加減しようともせず、立ち止まって考える暇だって与えてくれない。
あんまりだ、酷い人に捕らわれてしまった。
逃げられないのならせめて握りつぶしてやろうと、すっかり冷えを忘れた指に目一杯力を入れたが、痛みを訴えられる所か見た事のない破顔で受け入れられる。
悪態をつくという最後の対抗手段を奪われた私には、観念する道しか残されていない。
神様に誓いを立てる為、ゆっくり、だけれど確かに真っ直ぐ頷いた。





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